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次の日、アークが再び目を覚ました。
「おはようアーク」
「……ああ」
ぶっきらぼうにアークが返す。
「はい……朝御飯」
お粥を差し出す。
病み上がりなので、いきなりご飯は差し出すわけにはいかない。
「……すまない」
と言うとアークは腰を上げた。
「ねぇ……あんたこれから、当てはあるのかい?」
唐突に聞いた。
「………」
アークは何も答えない。
「じゃあ暫く此処で暮らさない?……独り暮らしは結構寂しいしさ」
それにアークがいるのが、当たり前に感じていた。
「………」
アークは箸を止め、あたいを見つめた。
その後、窓の外を眺める。
「……ああ」
やがて静かに答えた。
「じゃあこれから宜しくアーク!」
あたいからすれば正確にはこれからも……になるのだけど。
「……ああ」
「でも、あんた寝る場所は今日からこっちね」
あたいは満面な笑みで、床を指差す。
「フッ……ああ」
アークが薄く笑う。
あれから時が巡り、彼があたいと暮らし始め一年が経過した……。
「もう四月かぁ……あんたが来てから一年になるね。まぁ目を覚ましたのは半年前だけどね」
「ああ……」
いつものようにぶっきらぼうに答える
だがその後、彼は虚空を眺めていた。
「早いね」
「………」
一人何かを考え込んでいる。
「どうしたの?」
「いや…なんでもない」
とは答えているものの彼はあたいを見なかった。
その瞳はどこか遠く見ているように感じた。
直ぐ側にいるのに、彼を遠くに感じる。
そして別れが訪れた───
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