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その日の深夜である。
あたいが眠りついたのを見計らってアークは出ていった……。
「すまない……」
ただ、そう言い残し。
あたいは直ぐにベッドから飛び起きる。
寝てなどいなかった。
彼がいなくなるような予感がしていたので寝むりに付けなかったのだ。
こうなる事はわかっていた。
でも抑えられない。
彼が目覚めたあの日から、遅かれ早かれこうなる事は予想していた。
でも、追い掛けられずにはいられない。
何故なら、あたいは……あたいは彼を……彼を……。
「アーク!アーク行かないでー!!」
あたいは叫びながら、彼を追い掛けた。
アークは立ち止まる。
ドンと、あたいは後ろからアークに抱き付いた。
あたいは、もう気持ちを抑えられない───
「……どうした?」
アークが何事もないかように呟く。
「……もう帰らないつもりでしょう?」
「ん?何故だ?……俺は寝付けなくて外を……」
「ウソ…あんたの目、遠くを見てる」
アークの言葉を遮る。
「気付いていたか……」
「お願い行かないで」
気付くとあたいの頬が濡れていた。
涙がボロボロ溢れる。
あたいは彼の背中で泣きじゃくった。
「……俺はやはり君とは暮らせない
アークの言葉が苦しそうに感じた。
訳ありなのはわかっている。
何かを抱えているのはわかっている。
でも……でもあたいは……
「あたいは…あんたが……スキ…な…の……」
そうあたいは、もう彼を愛してしまっている。
「……俺に…は君を幸せに…できない……」
あんた何を抱えているんだい?
その声、苦しそうだよ。
「あんたがいてくれるだけで幸せなの……」
「………」
暫く彼は考え込む。
そしてゆっくりと口が開かれた。
「……ダークという名を知ってるか?」
唐突に意味のわからない事を……。
ダークと言えば金をさえ貰えれば何でもやる……殺しさえ平気でやる男の名。
「えっ?まぁ裏の世界じゃ有名だから……それがな…はっ!」
途中で気付き、恐る恐るアークから離れる。
「ま…まさか……」
「そうだ……俺は昔、ダークと呼ばれていた……」
「……ウソ」
アーク…いやダークの突然の告白にあたいは恐怖し崩れ込んだ。
違う意味で涙が止まらない。
涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。
「……すまない」
再びアークが歩き始める。
あたいをおいて───。
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