【‡第一章 時の風に誘われて‡】

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………………………………… 『ん…痛でぇ…ここは…何で牢屋にいるんだよッ……!』  俺は頭部に残る痛みにより気を取り戻して最初に見た景色…それは冷たい壁の色と、無情にも固く閉じている牢だった。あまりに急な展開に驚きを隠せない。何をしたわけでもないのにだ。 『おまえ、静かにしろ』  監視員がスケープの牢の前に来た。 『おいなんで俺が牢屋にいるんだよッ!俺が一体何したっつーんだよッ!』  俺は怒りに任せて怒鳴り事を上げた。しかしその怒鳴り声さえも取り合ってもらえないのだ。監視員はボードとペンを手にとった。 『今おまえの身元を調べている。名前は?』  監視員がスケープに問う。 『…スケープ…。スケープ・ヴァルフレア・エルバトーム。19…』  スケープは渋々答えた。身の潔白を証明するためだ。ここで下手に隠せば逆に疑いをかけられかねない。 『……やはりな…』  何かの手帳を見ながら監視員は呟き、ペンを走らせる。 『なっ…なんだよ』  監視員から漏れた言葉が気になり、少し不安を覚える。口ぶりからすると何かを核心したのだろう。 『…いや、俺は上に行くから何か話す気になったら呼べ。』  余分な情報は極力漏らさないらしい。そう言って監視員は上の階へと上がって行ってしまった。 『ォイちょッと…て行っちまった…どーなるんだ…俺…』  スケープはどうする事も出来ずに牢屋のベットに寝そべり、何もない冷たい天井の岩を見つめる。 《……ねぇ》  向かいの牢屋から呼びかける声が聞こえた。
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