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『ん…痛でぇ…ここは…何で牢屋にいるんだよッ……!』
俺は頭部に残る痛みにより気を取り戻して最初に見た景色…それは冷たい壁の色と、無情にも固く閉じている牢だった。あまりに急な展開に驚きを隠せない。何をしたわけでもないのにだ。
『おまえ、静かにしろ』
監視員がスケープの牢の前に来た。
『おいなんで俺が牢屋にいるんだよッ!俺が一体何したっつーんだよッ!』
俺は怒りに任せて怒鳴り事を上げた。しかしその怒鳴り声さえも取り合ってもらえないのだ。監視員はボードとペンを手にとった。
『今おまえの身元を調べている。名前は?』
監視員がスケープに問う。
『…スケープ…。スケープ・ヴァルフレア・エルバトーム。19…』
スケープは渋々答えた。身の潔白を証明するためだ。ここで下手に隠せば逆に疑いをかけられかねない。
『……やはりな…』
何かの手帳を見ながら監視員は呟き、ペンを走らせる。
『なっ…なんだよ』
監視員から漏れた言葉が気になり、少し不安を覚える。口ぶりからすると何かを核心したのだろう。
『…いや、俺は上に行くから何か話す気になったら呼べ。』
余分な情報は極力漏らさないらしい。そう言って監視員は上の階へと上がって行ってしまった。
『ォイちょッと…て行っちまった…どーなるんだ…俺…』
スケープはどうする事も出来ずに牢屋のベットに寝そべり、何もない冷たい天井の岩を見つめる。
《……ねぇ》
向かいの牢屋から呼びかける声が聞こえた。
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