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『え、女………?』
スケープは予想もしなかった呼びかけ、そして呼び掛けられた相手が女性だと言う事に、キョトンとした表情で女性を見た。
『そうよ、悪い?』
スケープがキョトンだった理由が女性という事を察したのか、些か不機嫌に返事を返した。
『あっぃやワリィ…そうじゃないけど…』
不機嫌になった理由がわからないのか、ポリポリと頭を掻きおどけた。
『別に謝られても困るわよ…それよりアンタ、ここから出たくない?』
その女性は冷たく閉ざされた牢屋の出口まで行き、スケープに問いかける。
『は…?でっ出たいに決まってるだろーが!つーか出れるのかよ?』
予想もしない女性の言葉に思わず大声で自分の意見を述べた。
『ちょ、ッシー!あんた何大声で言ってんのよッ!』
…そういうその女性もかなりの大声だ。その声は牢屋中に響いた。
『テメーもうるせぇよッ!……つか、出れるのかよ?』
今度はヒソヒソ声でやり取りを始めた。
『えぇ、ちょろいモンよ。…た・だ・し、ちょっと』
そこでルーチェは牢屋越しまでスケープを手招きで呼んだ。
『ちょっとある人を助けて欲しいのよ。その子とは捕まる時に別のお城に連れていかちゃって…』
少し元気なさげな、ものの見事に同情を誘うような顔だ。
『……そっか…、ま、出してくれるなら考えてやってもいいけどなー…?』
女性から目線を外しつつもチラッと横目で一言。今は手段を選んではいられないのだ。
『よしッ!なら決まり』
と、元気よく言えばその場から立ち上がる女性。起死回生の兆しが見えたのか、その顔には元気が宿る。
『俺はスケープ・ヴァルフレア・エルバトームだ』
スケープはとりあえず自己紹介をした。そんな空気ではなかったが、これから一緒に脱獄する奴の名前くらいは知りたかった。
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