【‡第一章 時の風に誘われて‡】

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『え、女………?』  スケープは予想もしなかった呼びかけ、そして呼び掛けられた相手が女性だと言う事に、キョトンとした表情で女性を見た。 『そうよ、悪い?』  スケープがキョトンだった理由が女性という事を察したのか、些か不機嫌に返事を返した。 『あっぃやワリィ…そうじゃないけど…』  不機嫌になった理由がわからないのか、ポリポリと頭を掻きおどけた。 『別に謝られても困るわよ…それよりアンタ、ここから出たくない?』  その女性は冷たく閉ざされた牢屋の出口まで行き、スケープに問いかける。 『は…?でっ出たいに決まってるだろーが!つーか出れるのかよ?』  予想もしない女性の言葉に思わず大声で自分の意見を述べた。 『ちょ、ッシー!あんた何大声で言ってんのよッ!』  …そういうその女性もかなりの大声だ。その声は牢屋中に響いた。 『テメーもうるせぇよッ!……つか、出れるのかよ?』  今度はヒソヒソ声でやり取りを始めた。 『えぇ、ちょろいモンよ。…た・だ・し、ちょっと』  そこでルーチェは牢屋越しまでスケープを手招きで呼んだ。 『ちょっとある人を助けて欲しいのよ。その子とは捕まる時に別のお城に連れていかちゃって…』 少し元気なさげな、ものの見事に同情を誘うような顔だ。 『……そっか…、ま、出してくれるなら考えてやってもいいけどなー…?』  女性から目線を外しつつもチラッと横目で一言。今は手段を選んではいられないのだ。 『よしッ!なら決まり』  と、元気よく言えばその場から立ち上がる女性。起死回生の兆しが見えたのか、その顔には元気が宿る。 『俺はスケープ・ヴァルフレア・エルバトームだ』  スケープはとりあえず自己紹介をした。そんな空気ではなかったが、これから一緒に脱獄する奴の名前くらいは知りたかった。
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