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玄関のチャイムが鳴った。
「はーい、開いてるよー!」
「おじゃましま――わぁー! いい匂い!」
由貴の家に来た紀子と友香は挨拶もそこそこに、鼻をひくひくさせて叫んだ。
「なんか毎年玄関でおんなじこと聞いてる気がする。あがって」
「あはは、省吾もう来てるんだ」
「朝一で大荷物抱えてね。矢部と洋司はまだだよ」
もう一度、おじゃましますと声をかけて二人は家に上がった。そして迷わず台所へ直行する。
「こんにちは」
「いらっしゃい。あらあら、相変わらず二人とも可愛いわねー。おばちゃんも紀ちゃんと友ちゃんみたいな女の子が欲しかったわ。見て! この、男のような由貴を! 高一にもなってお洒落も何もしないし……まったくなんでこんな風になっちゃったのかしら」
「あー、また始まった。これも毎年聞いてるよ」
台所に明るい笑い声が響いた。
「ねえ、今年のケーキはなあに?」
「今年はチョコレートケーキだよ。中にはオレンジを挟んでるんだ」
チョコレートを湯煎で溶かしながら省吾が答える。
「本当に省ちゃんは器用よね。おばちゃんでもそんな美味しく作れないわ。由貴に爪の垢を少し分けてやってもらえないかしらね」
「はいはい、聞き飽きました」
「……僕、丹念に手を洗ったからもう垢が残ってないんですけど」
「省吾! あんたも乗らないの!」
みんなして大笑いしていると、再び玄関のチャイムが鳴った。
「来たかな?」
紀子と友香は残りの二人を玄関まで迎えに行った。
「さてと、ママもお友達の家でクリスマスパーティーを楽しんでくるわ。あとは省ちゃんお願いね」
「はい、ごゆっくり楽しんできてくださいね」
「ちょっと、なんで私に頼まないのよ」
「じゃーねー!」
母親は友達の家へ持参する料理を取り分けて、手を振って台所から出て行った。
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