『白蒼の縁』

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夕方、東の低い空に大きな丸い月が浮かんでるのを見た。   それはまるで手を伸ばせば届きそうな… そんな風に見えたんだ。   スッと虚空に手を伸ばしてみる… 拡げた掌の先には、触れられそうで…でも決して触れることの出来ない月がわたしを優しく見下ろしていた。   時は少しづつ流れ   やがて空は秋の澄んだ空気を纏い、闇紺を一層深くする。 もうだいぶん冷たくなった風に、身をすくめながら夜空を見上げる。   すると…   さっきまであんなにそばにあった月が、もうわたしの真上に差し掛かっていた。    夜空の深い闇に、目眩くらいの白蒼の輝き。   手を伸ばせばこの手に収められそうなのに、でもやっぱり届かない。     それはまるでキミのように…   その細い肩はわたしのすぐ目の前にあるのに、手を伸ばしてもけして届くことはなぃ。     キミは月。   触れるコトは叶わなくても、わたしを優しく見守っていてくれる。   けして手は届かないケド、仄かな光でわたしを導いてくれる。     キミは月…
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