幸せを君に

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珈琲を啜りながら新聞に目を通して、いつもとなんら変わらない朝だが、心は確かに満ち足りている ピンポーン 静寂を邪魔する機械音に一瞬眉をひそめた 案の定、玄関の扉を開けてズカズカと足音が近付くと大きく溜め息を吐いた 『おっはよ~』 『何しに来た』 スーツに身を包んだ兄の渉はわざわざ出勤前に寄ったのか… 『あれ?恵ちゃんはどうしたんです?』 邪険に扱っても気にも止めないらしい キョロキョロとリビングを歩き回り寝室のドアノブに手を掛ける兄の腕を掴んで制止した 『よせ、まだ寝てる』 クスクス笑いながら兄は 『知ってますよ』 きびすを返した キッチンで勝手に珈琲をカップに注いで俺の目の前のソファーに腰掛けた 『でも、良かったですね。おめでとう』 『ああ』 こんな兄でも一応は心配掛けたのだと思い、そう言葉を返した 『そうだ。忘れてました。』 玄関へ行くと、買い物袋を持って戻ってきた 『朝食の材料です。僕の妹に食べさせて下さい』 必然的に一応めぐはコイツの義理の妹になるのだが、気に入らない 『まあ、そんな顔しないで下さいよ。あきの妹は将来僕の義妹になるんですから宗馬が結婚しても、戸籍上僕と宗馬は従兄弟ですし、兄妹にはなりませんよ』 『そう言うことか』 色々と腑に落ちない点はあるが、めぐの兄貴とコイツがどうなろうと知ったことではない 『はい』 ニコニコと笑みを浮かべる兄に胸の内で溜め息を吐いた
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