幸せを君に

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とりあえず、兄はほっといて朝食を作ることにする 『これ、いくらだ』 『ああいいですよ。ついでに僕の分もお願いします』 珈琲を飲みながら、新聞に目をやり顔も上げずに言う兄に苛立ったが、相手にしていても仕方無い 『あっ、いつものフレンチトーストで』 チッと舌打ちして、バゲットを切り、卵と牛乳と砂糖を混ぜた液に浸して、冷蔵庫から適当な野菜を出しポトフを作った フライパンにバターを溶かし、浸したバゲットを並べて火を弱めた ヨーグルトに刻んだフルーツを混ぜて、ガラスの小さな器に入れてラップをして冷蔵庫に入れた めぐのデザートだ ダイニングテーブルにフレンチトーストとポトフ、サラダと並べていると兄が来て椅子に腰掛けた 何故…こんな日に兄弟向かい合わせになって食事をしなければならないのか… めぐが起きてくる気配も無いので仕方無く朝食に手を伸ばした 『それで、今日は会議に出席するだけですか?』 『ああ、そのつもりだが』 特に会話すること無く食べ終える 『はあ、美味しかったご馳走さま』 俺の分まで食器を片付ける兄を制止した 『そろそろ行かないと遅れるぞ』 腕時計を見て慌てた顔をした兄はそれでもゆったりとした動作で俺に向き直った 『じゃ、また来ます』 『来なくていい』 『はいはい』 鞄を手に軽く手を上げて出て行く兄を食器を片付けながら見送った 結局、飯食いに来たのか…
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