幸せを君に

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静かにドアを開く音に緊張が走った 仕事に没頭する振りをしながらデタラメにパソコンのキーを叩く やっと近くに気配を感じて顔を上げた 『起きたのか』 さりげなく言えただろうか 『おはようございます』 恥ずかしいのか、通勤用の服に着替えて化粧をしためぐは俯いたまま頭を軽く下げた 夕べ…初めてだった筈のめぐは体はキツく無いのだろうか 『大丈夫か?』 めぐは黙って頷いた 『会社には連絡してあるから今日は休め。腹減ったろ』 めぐに準備した朝食を出す為キッチンへと歩く フライパンにバターを溶かし、フレンチトーストを作ろう トイレに行くと言っためぐを見ながらいそいそと朝食の準備をする フライパンの中をひっくり返しながら、何となく… 嫌な予感がして、火を止めて気が付いた めぐがトイレとは逆方向に歩いていた 直ぐに追いかけなければ、遠くへ行ってしまう気がした エプロンを投げ捨て走った エレベーターはすぐそこだ。運良く即座に乗ってしまっていたらもう間に合わないかもしれない 玄関で靴に足を突っ込んだままドアを開け放ってエレベーターに向かう 今まさに閉まろうとするエレベーターの中に人影が見えた気がして、適当にボタンを押した 開いた扉の向こうに片隅にもたれてぼんやりするめぐがいた とっさのことで抵抗しない腕を掴んで引っ張り出した 何故…そんなに傷付いた顔をしているんだ 『いやっ』 現状を把握して腕を振って俺の手を振り払おうとする手に力を込めた 『いやっ離してっ。離して下さい』 嫌がるめぐを玄関まで引きずって開けられた玄関の縁にしがみつき抵抗するめぐの腕を引き、暴れるめぐに口付けた 荒々しく、めぐの舌を追いかけ回して隅々まで絡めた。 そうすればめぐの力が抜けてしまうと分かっていた
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