short story

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【神さま、どうか】 「生きろ」ってさ 祈りの言葉はさ 言う時は大体もう どうしようもないんだな お前はそう言って笑った 奥さん、待ってんだろ? お前に会いたがってたよ 家の猫がさ、子供産んだよ しろいのと、きたないくろ どちらか貰ってくれんだろ 約束したじゃないか まくし立てるお前の目に 俺の顔、映ってないよな 頬に落ちたものは多分 涙ってやつだろう 言いたい事は沢山ある だがもう口が動かない 聞きたい話も山ほどだ だがその声も遠ざかる ごめんな ごめんな お前がどんなに 俺を引き止めたって お前がどんなに 泣いて喚いたって どうしようもないんだ もう俺は行かなきゃ 猫の事は頼んだ 妻と娘もよろしく なんて言ったら我が儘か そんな顔するなよ 男前が台無しだ ああ 神さまどうか 次に生まれる時は こいつん家の猫がいい しろくても、きたなくても 大事に飼ってくれるだろう 膝の上で眠る俺を 優しく撫でてくれるだろう あの綺麗な壁で爪を研いでも 笑って許してくれるだろう こんな糞みたいな争いで ボロ雑巾のようになるまで 鉛玉を喰らう事もないんだ だからせめて お前は生きて しろかくろかきたないのか 子猫が生まれたら 俺の名前をつけてくれ 首輪はそうだな、白がいい ブラシも毎日かけてくれ ああ そろそろ 限界だ さよなら またな 親友 次に会う時はきっと 笑顔でいてくれるだろう?image=304423541.jpg
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