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いつもパソコンに向かっている俺を、パソコンの学習と思い込んだ母親は
「パソコン上手になった? いい仕事が見つかるといいね」
と言っては笑ってた。
毎日働きづめの母親の笑い顔はどこか疲れていて、俺はその笑顔を見るとゲームばかりやっている自分が情けなくなった。
そんなある日、母親の仕事先から電話があった。
母親が倒れて救急車で病院に運ばれたとのことだった。
俺は急いで病院に向かった。
ボロの自転車を1時間あまりこぎ続けて、ようやく病院に着いた。
心配している俺に向かって母親はベッドから起き上がり
「ただの過労だよ。」
と笑った。
「パソコン上手になって、いい仕事が見つかったら自動車も買えるからね。」
と言いながら、細い腕を伸ばして汗だくの俺の額をタオルで拭いた。
病院まで遠いこともあって、俺はそれ以降は病院に行かずに、母親の世話は近所のおばさんに任せっぱなしにして相変わらずゲームにのめりこんでいた。
母親が入院して5日後、病院から精密検査の結果をお伝えしますからという電話があり、俺は自転車で向かった。
5日ぶりに会った母親はいよいよ元気がなく、俺は妙な不安を覚えた。
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