14830人が本棚に入れています
本棚に追加
母親との面会の後、診療時間を過ぎた診察室に通らされた俺は、担当の医師から母親が急性白血病であと3ヶ月あまりの余命だということを聞かされた。
俺は頭の中が真っ白になった。
それから母親に負担をかけっぱなしで、最近は母親の期待を裏切ってゲームばかりしている自分が情けなくて、涙がこみあげてきた。
医師は「患者さんに動揺を察しられるといけませんから今日はこのまま帰った方がいいでしょう」
と言った。
俺は泣きながら自転車をこいで帰っていった。
家に着くと俺はRMTで自分のアカウントやアイテムを全部売りに出した。
かなりの安値なのですぐに買い手は見つかった。
翌日、自分のちっぽけな郵便預金口座から8万円を引き出し、母親が好きなチーズケーキとヨーグルトを立派な店で買い、病室を訪れた。
母親はチーズケーキを見ると驚いて
「お金はどうしたの?」
とたずねた。
「パソコンのバイトで8万円手に入ったから」
と俺は嘘をついた。
母は心から嬉しそうににっこり笑って
「パソコン上手になったからいい仕事が見つかったんだね」
と言った。
「免許をとって車を買うのに無駄遣いはしないでね」
と続けて言い、おいしそうにヨーグルトを食べた。
それから一週間ほどが過ぎた日の朝、母親は亡くなった。
母の遺体が安置室に運ばれ、がらんとした病室で小物類を片付けていると、看護婦さんが俺を慰めようと優しく声をかけた。
「パソコン得意なんですってね、お母さんは毎日のように自慢してたわ」
俺はその言葉を聞くやいなや涙がこみ上げてきた。
そして体を震わせて大声を上げて泣き続けた。
最初のコメントを投稿しよう!