加害者側の訪問

2/4
前へ
/182ページ
次へ
家内を亡くしました。 お腹に第二子を宿した彼女が乗ったタクシーは、病院に向かう途中に居眠り運転のトラックと激突。 即死のようでした。 警察から連絡が来たときはひどい冗談だと思いました。 いつものように今朝も笑顔で送ってくれたのに。 冷たくなった彼女と対面しても現実の事態として理解できませんでした。 帰宅して呆然としているところ、トラックを運転していた男性の父親と婚約者の訪問を受けました。 父親は土下座しながら 「自分と家内が死んでお詫びするから、息子には生きていく事を許してほしい」 と。 警察から聞いたところによると、入院している母親の治療費を稼ぐため男性は無理な労働をしており、それが居眠り運転をした原因のようでした。 同様に土下座している婚約者に目をやると、若くて綺麗な女性にもかかわらず荒れた手をしています。 本来ならとっくに結婚しているところ、運転手の母親の入院のために延期し、彼女もまた入院費を捻出するために懸命に働いていると聞きました。 私は何て言葉をかければいいのか分かりませんでした。 罵ることができる相手だったらよかったのに。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14830人が本棚に入れています
本棚に追加