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家内の葬儀にはトラック運転手が警察官に伴われて参列しました。
彼には思い切り罵詈雑言をぶつけ、殴ってやろうと思いました。
一生憎むつもりでした。
しかし、震えながら土下座し私の顔を見ることのできない彼を見ると
「彼もまたこれから苦しみを背負っていく人間なのだろう」
との思いがよぎりました。
「つまらない人間のために家内を亡くしたと思いたくない。
罪は罪として償ってもらうが、その後はきちんと生きて欲しい」
私が彼にかけた言葉です。
正しかったかどうか分かりません。
本当の私の本音かどうかもわかりません。
ただ、私には彼を憎むことができませんでした。
震える声で返事をする彼をみると私の気持ちは伝わったようです。
怒りをぶつけられる相手だったらよかったのに。
彼そして彼の家族に会わなければよかった。
葬儀の後ようやく一人になれてウィスキーをなめていると3歳の長男が起きてきました。
私の横にすわりながら
「お母さん大好きだったんでしょ。
いなくなって悲しいんでしょ。
悲しいときは泣くんだよ」
と。
私は息子の前でも家内を愛していることを口に出す父親でした。
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