やわらか

2/8
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
  温かい日差しが柔らかく顔にかかる。 あぁ、朝だ。 両手で顔を包み擦る。 最悪だ。 最悪……。 思い出すと、じんわりと溢れ出る涙。 慌てて拭う。 昨日散々泣き明かし、目と鼻が痛いんだ。 喉もかれてるんだろうな。 「はぁー……」 小さく溜め息。 今日が日曜日で良かった。 まだ寝ていようと、深く布団に潜り込む。 「おはよー!! 愛陽(のりや)」 大きな音を立ててドアが開く。 今一番会いたくない相手。 幼馴染みの 叶 力(かのう りき) 「おいっ! 朝だぞっ! 起・き・ろ!!」 16歳にしては高い声。 握り締めた布団を強い力で引っ張られる。 「やめろ」 掠れた声で言うと、 「どした?」 力を緩め、布団越しに優しく訊いて来る。 リキ…… だから、優しくする相手、間違えてるし…… 「何だぁ? 風邪ひいたのか?」 優しい声色。 声を聞いて、さらに自覚する。 散々悩んで、気付いて、泣いて―― 幼馴染みの、それも同性に“恋”してる事実。    
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!