やわらか

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  言ってしまって、 さらに痛みを増すココロ。 「何? 見てたのか?」 掌は、顔を包んだまま、親指が唇を掠める。 触れられた唇の感覚に、痛い瞼をゆっくりと開けると、 目の前にリキの顔があった。 「なっ……」 唇に、柔らかい唇が触れて来た。 優しく、柔らかく。 信じられなくて、動きも、思考も止まる。 「愛陽……お前、俺の事好きだろ?」 掠れた声。 何で? いつもの高めの声じゃなく、 妙に熱を帯びた声色。 驚いた。 触れられた唇が、熱い。 やっと動き出した頭。 何があったか思い出し、一気に顔が熱くなる。 「リキ……」 名前しか呼べなくて。 「今日が何の日が分からない?」 にっこりと、可愛らしくほほ笑み、リキが訊く。 考える。 12月23日 「誕生日!」 そうだ。 リキの誕生日。 「忘れてたのかよ」 いつもの調子に戻ったリキが、口を尖らし、文句を言う。 「そんな日は、好きな奴と居たいと思うの当たり前だろ?」    
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