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紅が顔を上げた瞬間、男3人の動きが止まる。 僅かに目を丸くして紅を凝視していた。 そんな3人に紅も無言で視線を返していると、傍に居た女がたまらず吹き出す。 「ちょっと先生方、なに3人揃ってみとれてるんです?泣く子も黙る浪士組のお偉いさんがこんな子に黙らされてどうするんですか」 「っ……いや、参ったな…新人と聞いて油断していたようだ。紅ちゃんか…凄い別嬪さんだね」 「ですってよ?良かったなあ、紅ちゃん」 女が紅に微笑みかけると、紅も嬉しそうに頬を緩めて再び頭を下げるが、その口は開かない。 山南と新見が怪訝そうな顔をすると、女は慌てて付け足した。 「あぁ、ごめんなさい。この子口が聞けないんです。何かあったらしくて…」 「口が…?余程辛いことでもあったのかな」 「えぇ、多分。だからお話の相手は出来ないんですけど…そのかわり、とっておきがあるんですよ」 口を聞けない紅は、女が会話している内に運んできた酒を手に取り新見から順に酒を注いでいく。 「とっておき?」 「えぇ。見てのお楽しみ、ですよ。さあ紅ちゃん、いいかしら?」 丁度3人に酌をし終えた紅は頷いて立ち上がり、すっと和室の中央に向かう。 「…舞か」 新見が呟くと、女はにっこりと微笑み、いつの間にか手にしていた三味線をゆっくりと演奏しはじめた。
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