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「ともに戦え。その代わり、万が一私が先に斬られたら即座に姿を消せ」 「な、」 何を、とそれまで無表情だった顔に驚きの色を見せて返す前に、目の前の襖が乱暴に開かれ、二人分の影が踏み込んでくる。 「‥やっと見付けたぜ‥てめえが頭か?」 そう言った彼は血に塗れていたが、彼自身のものは殆ど無いようだった。 油断無く刀を構えて睨み合うが、すぐに斬りかかってはこない。 「‥あぁ、頭は私だ。他の者達はどうした?」 「さあ、まだどっかで斬り合ってるんじゃないですか?」 「この付近に居た奴らは斬らせてもらった。あんたへの援軍は待たねぇ方がいいぜ」 男は意外にもまともに返ってきた彼らの言葉に苦笑を浮かべながら、そうか、と呟いた。 その時、後から入って来た方の浪士が、男の後ろの闇に浮かぶ人物に刀を向ける。 「で、君は?」 「忍だろう。こいつに雇われでもしたか」 闇に紛れていた馨は、己の失態に気付き心の内で舌打ちをすると立ち上がり、闇の中から一歩出て男と並ぶ。 確か土方‥と言っただろうか。事前に調査していた壬生浪士組の情報に照らし合わせ、己の正体を平然と言い当てた男を睨み付ける。 不覚だった。 今の主である隣の男との契約のひとつに、呼ばれて姿をあらわす時は気配を完璧には消すな、というのがあった。 さらに直前の思いがけない命令のせいで動揺してしまい、気配を消す余裕がなかった。 それさえ無ければ、気付かれずに不意打ち出来たのに。 悔しいが、見付かってしまったのは紛れも無い事実。 すっ、と腰から二本の刀を抜く。普通のモノより幾分短いふたつを交差させる、独特な構えを取った。 ――それを合図に、戦いは始まった。
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