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「‥あなた、隠密の割に中々やりますね。しかも普通の剣じゃない。そんな面白い剣士、滅多に居ませんよ?」
笑顔で褒められても、自身の劣勢を悟っている馨は何も答えない。それを分かっていても尚、彼は話し続ける。
「是非手合わせしてみたいと思ってさ。僕は壬生浪士組、沖田総司」
名乗ったのだから当然教えてくれるよね、と無言で責める沖田に根負けし、馨は静かに口を開く。
「‥紅内、馨」
「クレウチカオル‥覚えておきましょう」
記憶に刻み付けるように呟くと同時に、沖田は再び斬りかかる。
しかし、今度は刀の触れ合う音は響かない。
構えていた馨はふわりと軽く避け、先程まで自分の居た場所に踏み込んで来た沖田の、僅かな隙を狙い右の刀を突き出す。
「っ‥!」
かわしきれなかった沖田の、靡いた羽織りにすっぱりと切り込みが入る。しかし沖田は全く気にせず、かわした勢いで逆に刀を振り急所を狙う。
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