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普段滅多に見られない、副長三人という組み合わせで町に繰り出す姿。 廊下や玄関で擦れ違った者の中には、挨拶も忘れてぽかんとする者も居た。 「あれ‥、土方さん?山南さんに新見さんも‥珍しいなあ、三人で出かけるなんて」 たまたま、中庭でそれを見掛けた藤堂も例外ではなく、首を捻っていた。 そんな一行はやがて、一軒の遊廓の前に来る。 決して大きくはないものの、それらしく鮮やかな外装の真新しい建物だった。 「‥ああ、此処です。最近よく来てるいい店でね。良いですか、新見さん」 「あぁ、中々良さそうな店だが」 「私が遊廓、なんて意外でしたか?」 言葉を止めて店に視線を巡らす新見に、山南はくすりと笑う。 まさにそう思っていた新見は否定せず、そうだな、と呟いた。 「山南せんせ、土方せんせ、いらっしゃいませぇ。そちらが新見せんせかしら?」 「ああ、今日は新見さんの為にも、特別別嬪をつけてくれよ」 「任しといて下さい、実は今日新人が入ったんですー」 お入り、と女が言うとするすると襖が開いた。 そこには酒を持った女が一人、深く頭を下げていた。 「この子、今日からお座敷なんです。名前は紅(ベニ)、と」 女がそう紹介し、ゆっくりと紅が顔を上げた。
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