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人生いきたあたりばったり。
現在、街中から少し外れた国道沿いにでかでかと看板を掲げる中華料理店に俺はいる。
「どっこいしょーっと……。はじめまして。店長の水瀬(ミナセ)です。宜しく。堅苦しいのめんどいから始めようか」
「はい、宜しくお願いします」
「そんなかしこまんなって。えっと……、桐生零一(キリュウ レイイチ)二十四歳……。ふーん、店、最後まで残れる?」
「はい」
「じゃ、採用。明日から来れる?」
「は、はぁ……」
新人アルバイトらしき店員に案内され、座り心地なんてまったく考慮されていない真四角の椅子に腰を下ろした直後、目尻に深いシワを作ったオールバックのおっさんと向き合った直後のことだ。
時間にして、わずか三十秒。
おっさんは確認するように履歴書を上から下へ眺めただけだ。
あっさり過ぎて……というより、あまりの短さに拍子抜けした。
今日はもう帰っていいと言われ、座り心地の悪い椅子から離れる。きびすを返すと、ちょっと待てと引き止められた。
「明日の時間だけど」
「はい」
「簡単に仕事内容の説明するから、三時にきてもらえる? それと、黒い革靴も」
「わかりました。失礼します」
面接って、もっと根掘り葉掘り聞かれるものだと思っていたけど、あのおっさんの喋りを見たら、やたらと短いわけもなんだかわかる気がする。
他の従業員も同じように決めたのだろうかと思うと少し怖い気もするけど、細かいことを気にしても仕方がない。
そんなことを思いながら今度こそ店を後にして一度、振り返る。
これ以外の目印はないだろうと言える巨大な看板。
外観は去年新規オープンしただけあって綺麗だ。
けど……。
面接をした二階の窓辺に目をやってすぐに逸らす。
確かにノリで面接に来てはみたけど、此処って陰の気が漂ってるんだよな……。
俺、やっぱ呼ばれたんだろうか。
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