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「お兄ちゃん、おなかすいたね」
弟の表情はさみしそうにも見えるし、ほんのりと笑っているようにも見える。
「そうだな」
公園のベンチから二人で空を見上げる。
「あっ、一番星だ!」
弟が大仰に大きな声をだして、一番星に向かって人さし指をつきたてた。
家を出てきてから何日がたつのだろうか。父と母は心配しているのだろうか。
まわりの暗闇が、えもいわれぬさみしさのように僕たちをつつみこんでいる気がして仕方がない。
「おにぎりでも買いに行くか」そう言ってから二人で、せーので立ち上がり、弟と手をつないでコンビニに向かうことにした。
――お母さん、お父さん。
コンビニに向かう途中、消え入りそうな声で、弟は確かにそう言ったが、僕は聞こえていないふりをした。
ひんやりとした風が頬を刺激し、その冷たさが身体全身に伝わっていく。
僕は弟の手を強く握りしめた。弟の手のひらだけでも暖かさが感じられるように。
僕はいつものように計算をはじめる。
みんなから、かき集めたお年玉は、三万円あったが、今ではもう二千円しか残っていない。
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