夢の終わりに

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僕とあの人の住む家はとても小さくて、少しと歩く事なく裏庭に出る事が出来た。 そこは僕の一番好きな場所だった。 少しでも広く世界を感じられたから。 庭の景色はいつも同じ。月明かりの色をした花が咲き誇っていた。 『綺麗な色でしょう。この花であなたの髪を染めたのよ』 花畑にしゃがみ込んでうつむくと、さらさらと豊かな金糸が僕の頬にこぼれてきた。 目に鮮やかなこの生糸は僕の髪。瞳には特上の橄欖石を選んだと言っていた。 白磁の肌に髪が滑る。無機質の癖に人間くさい柔らかさを備えた肌は、淡い光を浴びて異様な程に白く煌めいた。 空を仰いでみれば、藍色の月夜。 創られてこの方、僕はこの空が夜明けを迎える瞬間に出遭った覚えがない。 この庭以外の大地を踏みしめた事がない。
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