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『ああ、綺麗な花だわ。ありがとう。あなたは優しい、私の自慢の息子よ』
伏せきりになってから、あの人が僕を本当の息子の様に呼ぶ事が増えた。
手を伸ばしてきて僕の金糸の髪に触れる。冷たい陶器の頬を撫でて笑う。
笑みを浮かべて「母さん」と呼んでやると、花の様に笑顔を咲かせて呟いた。
『綺麗ね、あなたは本当に綺麗。あなたさえ傍に居てくれれば、私は幸せなんだから』
まるで呪文の様に、合言葉の様に。その科白は、あの人の口癖と化していた。
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