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それは、数時間前。
自分の番号を確認した俺は、その場で三輪に短い文章をメールした。
友ダチにも、研究所の松永さんにも、家すら後回しで、真っ先にだ。
合否の連絡をしてるんだろう、周りは、そんな連中でごった返していて少しうるさい。
だから、俺は少し離れようと歩き出した。手にはしっかり電話を握り締めて。
そうして駅への道を歩きながら、掛かってくるだろう電話を待つ。
数分後三輪からの着信。
待ってたって事が分からないように、心で5つ数えてから出る。
『片山さん?おめでとうございます!』
「今大丈夫か?期末だろ?」
『大丈夫です。今休憩に入ったとこなんです。そんな事より、よかったですね』
「あ、、うん。ありがとう」
『片山さん頑張りましたもんね・・・俺ほっといて』
「ほっといては余計だつーのっ」
『はは、でもほんと良かったですね』
「あぁ」
『それじゃ明日一杯お祝いしましょうね』
「え?・・・・」
俺はびっくりして、その場に立ち止まる。
一次に合格してからはひたすら二次の為に、研究所に通った。
三輪と会うのを我慢して・・・。
そう、確かに我慢したんだ。俺も。
だから特別三輪と約束をしたわけじゃないけど、今日この後、三輪と会う事にな
るだろうと思ってた。
なのに・・今日じゃなく明日?
『え?って片山さん、俺も一応期末中ですよ。明日で試験は終わりだからその後で、ね』
電話の向こうの三輪の声からはなんの感情も分からない。
「あ、、そうだよな、うん、明日な」
なんだよ。
会いたかったのは俺だけかよ。
・・・いや、別にいいんだけど。
そりゃ、そうだよな。一応試験中だし、な。
気が抜けた。
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