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佐伯くんは、溜め息を零すとこう言った。
「……泣くほど、嫌だったんですか?」
彼の声音には、落胆の色が滲んでいる。
「ち、違うの、これは……」
「じゃあ、嬉し涙?先輩は昔から泣き虫ですね。」
きっと、目を細めて微笑んでいるに違いない。
「待っていてください。オレが今すぐ抱き締めるから。」
――プツン。ツーツーツー……
佐伯くんは私の返事も聞かずに、一方的に電話を切った。
「まったく……もう。」
私はクスリと笑って、指で涙を拭った。
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