プロローグ

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昼頃に地上を温め続けた太陽も今は西の空へと傾き、おそらく小学校へ上がる前であろう一人の少年と一人の少女は、他の誰もいない公園で瞳を涙に濡らしながら手を繋いでいた。 「きっと、また会いに来るから…」 そう言って少女は握る手にほんの少しだけ力を加えた。 「うん…」 少年はただ、弱々しく頷くことしか出来なかった。 「次に会う時は私を…」 少女の言葉は風に掻き消され、しかし少年の耳には確かに届いた。 「うん…約束する」 少年の言葉に先程の弱さは無く、意思も強く頷いた。 「それじゃぁ、もう行くね?…バイバイ、さーくん」 「うん…バイバイ、るーちゃん」 『さーくん』と呼ばれた少年はどこか焦点の合わない目で少女を見送った。少女は何度か名残惜しそうに振り向き、しかし迷いを振り切り帰って行った。 見送られた少女は、少年がその帰り道に事故に遭い生死の境をさ迷った事を告げられないままに、父親の転勤先へと引越して行った。
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