とりあえず将来の事とか考えたくないよね

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春の温かな気温に少しだけ眠気を誘われつつ、俺は今学校へと続く坂道で必死に歩を進めている。 この坂道は傾斜が必要以上に急で、よく運動部がトレーニングに利用している。 純粋な帰宅部である俺には非常に有り難くないけど。 今日は始業式とHRだけなので、早く帰ることができそうだ。 新しいクラスも気になる。 前向きな期待と言うものではないんだな、これが。 「おはよ、聡。朝からまた随分と辛気臭い顔してるな」 随分と失礼な挨拶を寄越した『コレ』は、俺と共に無事二年に進級できた佐々木誠一(ササキセイイチ)。 当然俺は何の障害もなく進級できたが、誠一は頭が少し、いや、かなり残念な出来なので、留年を避ける為に、多くの策を弄しました。 主に各科目担当の教員に対する土下座と、単位認定の為の課題ですけど。 因みに『コレ』とは小中と同じ学校に通い、高校も当然の様に同じだったりする。 ここまで来ると一生物の腐れ縁………、とてつもなく嫌な予感がする。 『コレ』と一生縁が切れないとは…部屋の隅っこで泣きたくもなるね。 「そんなに俺を見つめるなよ………照れるだろ☆」 「…今年こそ『コレ』と違うクラスになりたいなー」 そもそも一瞬たりとも見つめてないし。てか語尾の☆が気持ち悪いことこの上ない。 「『コレ』なんて言うなよ~。まったく…聡の照れ屋さん☆」 俺は無言で自分の親指を『コレ』の肝臓と思しき部分へと突き刺した。 因みに、先程から非常に心外だが『コレ』に、聡、と呼ばれているのは一人称俺こと山元聡(サトル)、何処にでも居る中肉中背の…いや少肉中背の少年である………はずだ。 ただちょっとだけ、人との関わりを持つことに対して煩わしさを感じているだけ。 寧ろ、そんな人間なんて一々数えてなどいられない程多く存在すると思う。 だから自分は普通なんだ。 何処にでも居る通行人Aなんだ。 これ迄も、これからも。 何の変哲もない平穏な日々が続くだけだなんだ。
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