大東亜戦争戦死者の書

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御母さん暫く御無沙汰しています。忠男も益々元気で毎日御奉公一途で励んでいます。 此の度突然重大使命を帯びて某方面へ出発致します。 思残す事はありませんが、二十有三年の間立派な帝国軍人と成る迄訓育下された御恩に何一つ報いる事なく御別れ致すのが心苦しき次第です。 御母さんの今迄の苦労は筆舌に尽くしても余りあると思います。 何時かは母上を幸福にさして上げたいと念願致して居りましたが、今となっては仕方ありません。 しかし大日本に生をうけし男として最上の孝行の道にのぞまんとする今喜んで征きます。 御母さん笑顔で送って下さい。 (中略) では最後に御母さんの幸福を祈る共に、親戚及近所の皆様の御多福を祈りつつ笑って征きます。 二十三歳 伊豆諸島御蔵島周辺海域にて戦死
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