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『近藤さんが…、
近藤さんが…近藤さんが…』
そう言って健気に働き、剣術をどんどん憶えていく様を見て、そんな憐れみの感情など…どこかへすっ飛んでしまった。
一人の人間をここまで慕うこの少年は、自分の憧れる武士の忠義と似たような心を持っていた。
幼い総司にとって、近藤と過ごす時間だけが心の支えだったのだろう。
肉親を恋しく思う事もあっただろうが、近藤の前では一言も姉達の話はしないらしい。
幼いながらに近藤の心を煩わせるだけだと察したのか、…それとも、口にしたなら自分が堪えきれなくなると思ったのか。
ともかく総司は、一言の弱音も吐かずに、ただ近藤との剣術稽古に熱中した。
近藤もまたそんな総司に気付いてか、総司の稽古に根気強く付き合った。
(心底惚れ込んだ大将に
忠義を誓い…。)
『おめぇはもう、
見つけたんだな…。』
ボソリと呟く土方に気付き、
『何か言いましたか?』
総司が真っ直ぐな目で覗き込んできた。
その目は土方の心に強く残り、後に、それと全く同じ目をする諒に出会う事になるのだが…。
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