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無意識に自分の拳へ向いていた視線を、総司に戻した。
熱いのか、苦しいのか…。
目を瞑ったまま、自身の胸倉をギュッと掴んでいる。
「あな…たちと、
一緒に……いきた…です。
かな…ず役に、…ちますから
おいて…、…かないで。」
「総司…。」
思わず、ため息交じりの声が洩れた。
どうやら譫言(ウワゴト)だったようだが、その言葉が総司の切実な思いだと…、土方の胸を痛めつけた。
総司が病を申告しない理由…。
それは、隊務から離れたくないから。
『自覚を持て、総司。』
土方は諭すような思いで総司に言ったが、当の本人も、そんな事は分かっていたのだろう。
気を付けて治る病なら、養生だってする。
しかし、重い病…不治の病だと知られれば隊内では多少なりとも動揺を呼び、中にはこれを好機とする者も有るかもしれない。
隊外に於いても、「沖田総司」の名前を出しただけで怯える者がいるという状況は、新選組にとっては好都合だった。
ただ一個人が倒れただけ…とはいかない。
総司は壬生浪士組時代から、一番隊の隊長・組頭を務め続けてきた「沖田総司」なのだ。
どんな血腥(チナマグサ)い任務も、誰よりもこなしてきた…。
その総司が倒れるという事は、近藤の新選組にとって悪材料。
そんな事、…分かっていたのだ。
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