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汗に濡れた総司の額を、土方は固く絞った手拭いで拭いてやった。
「着替え…だったな。」
そう独り言を洩らし、土方は替えの着物を探しに襖を開けた。
寝間着になるような物を探していると、着物の間にあった黒い懐刀が手に触れた。
「…ん?」
土方が漁っていたのは総司のではなく、諒の荷だったのだ。
(なんで総司がこんなモン持っ
てやがんだ?)
いくら刀好きとはいえ、帯刀している総司が、大した銘でもない懐刀に金を出すとは思えない。
しかも、後生大事に着物と一緒にしまってある。
そんな金があるなら、真っ先に甘味に注ぎ込みそうなものだ。
そう思ってしげしげと見てみると、総司ではなく諒が着ているのを目にした事のある着物ばかり。
(秋山のか…。
って事は、こいつぁ大坂の女
の形見…ってとこか。)
納得する土方の脳裏に、先日助けた女の姿が浮かぶ。
死んだ男の形見の櫛を、身を以て護ろうとした女。
あの女はちゃんと、前を向いて歩いているだろうか…。
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