三十六

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そして、その藤堂…。 江戸出張の折に、今にも斬りかかって来そうな目で自分を睨んでいた。 総司や諒が近藤の為に必死なのと同じように、藤堂も伊東や山南には相当の執着を見せている。 (なんでぇ、…似たモンばっか  じゃねぇか。) 大事に思う人物、…居場所をくれた者の為に、己の全てでぶつかろうとする者達…。 土方もまた、近藤の為に動く者の一人だ。 だが、その似た者ばかりの中に自分も含まれるという事に、土方は気付いていない。 自分の中で悪ガキと一括りにしている者達と似ている事を、認めたくないだけなのかもしれないが…。 悪ガキだと括りながらも土方は、彼等が…自分の憧れた武士に近い者であると認めていた。 そして彼等が、危うい一面を持つ事も知っている。 今度こそ総司の着物を引っ張り出し、土方は総司の横に座った。 さっき拭いてやったばかりなのに、総司の額には珠のような汗が滲んでいる。 .
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