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彼女のケイタイから、知らない男が電話してくる。
これだけで状況ぐらいわかるだろ?
思ったとおり、すぐに電話がかかってくる。
「・・・・なに?」
「・・・・あんた、理沙のなに?」
「なにって、そんなの決まってんだろ?理沙の浮気相手。・・・つーか、俺が理沙の本命だったり?」
挑発するように、わざと怒らせるように。
電話越しの健一。
無言。
「・・・そんな怒ることないだろ?お前だって浮気してるんだから同じだし?」
俺の言葉に息を呑んだ様子が手に取るようにわかる。
「房子。俺の友だちなんだよね?全部俺知ってるし。」
言葉が出ない。
そんな健一に最後の一言。
「ちょうどいいだろ?理沙と別れてくんない?」
「理沙。」
アイツのクラスの前に来て呼び出し。
教室にいた理沙は目を見開いて、不機嫌な顔をして俺のところにやってくる。
クラスの奴ら、廊下にいた奴らが、俺たち2人に興味深い視線を投げかける。
休み時間に来たのは初めて。
いつも、俺たちが会うのは人がいない時間帯、人がいない場所だから。
「先輩っ。ちょっと何しに来たわけ?」小声で、少し怒った顔で俺を見上げる。
「何その態度?さっきまであんなに俺にキスねだってたくせに。」
耳元で意地悪く囁いてやれば、理沙はもっと眉をしかめて嫌な顔をする。
「みんながいる時間帯は来ないでよ。」
「ふーん。せっかく落し物届けに来てやったのに。」
俺の言葉に「え?」って不思議そうな表情を作る。
「落ちてた。」
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