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大丈夫──。苦しいんじゃない。悲しいだけだ。
体が苦しまなければ、穏やかに、安らかに、眠れるなら本望じゃないか。
“体”の辛さより“心”の辛さのほうが重いなんて、そんなことはありえない。
そうでしょう? お月様。
私は語りかけてみる。当然、黄色い真ん丸は答えない。
──大丈夫。月が出ているから。今夜も、この夜を越えることができるから。
私は流れる涙をぬぐいもせず、床に横になった。ゆっくりと目を閉じる。
寝れば、朝が来れば、夜が明ければ、陽の光に照らされれば──、きっとまた笑える。
眠ろう。夢を見よう。幸せな、幸せな夢を。
だから今夜は──、おやすみなさい。
*
いつものようにクロを迎えに、あたしは屋根裏へと登った。
クロは最近ずっと夜中に自分のベッドを抜け出し、屋根裏へと上がって、そこで寝ているのだ。
いけないとしつけてはいるのだけど、なにせ自由な動物だからなぁ。
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