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困ったものだ。もう冬が近付いているのに、あんな寒いところで寝てたら風邪をひくだろう。
──仕方がないから、いっそ屋根裏にベッドを設置してやるか。
そんなことを思いながらあたしはやっと階段を登りきり、クロがいるはずの部屋に顔を出した。
「クロ?」
クロはいつもと同じように、床に体を丸めて眠っていた。その真っ黒な毛並みが、美しく朝の太陽に照らされている。
いつも思うけど、床で寝て寒くないのかな。
「クーロー?」
もう一回呼びかけながら、クロに近付いた。
おかしいな。いつもなら、一度呼べばすぐに起きてくるのに。
妙だな、と思いながらも、あたしはしめしめとクロの体を抱き上げた。クロはなかなか抱っこさせてくれないのだ。
しかし、喜んだあたしの手に包まれたクロの体は、おそろしいほど冷たかった。
その意味を瞬時に理解したあたしは、自分でもなにを言っているんだかわからない奇声を上げ、階下の母の元へ走った。
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