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猫は死ぬ時には姿を消すというけど、本当にそうなのかな。
だったら、どうしてクロは消えなかったのだろう。
あたしが心配すると思ったのかな。それとも、もうそんな力も残ってなかったのかな。
もしかして──。
これはあたしの都合のいい想像だが、そうだったらいいなと思う。
クロは、家を離れたくなかったのかもしれない。傷ついた自分を迎えてくれて、共に生きたあたしたちと、離れたくなかったのかもしれない。
他の場所で死ぬこともできただろう。けれど、きっと生まれた時から孤独に生きてきたクロには、最期の瞬間までひとりで迎えるのは、耐えられなかったに違いない。
せめて、あたたかい思い出と安らぎの詰まったあたしたちのそばで、月の光に照らされながら死ぬことを選んだ。
そう思うと、私は再び目頭が熱くなった。
もし、クロが寂しくならずに召されたのなら、よかった。
でも、やっぱり関係なく、寂しい。あたしは、クロがいなくて寂しいよ。悲しいよ。
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