パッパ・ネーロとパードレ・ラゾーヨに捧ぐ

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 気圧の変化で耳鳴りがしている。膝の上にあるパソコンの起動音も聞こえなかったほどだ。 僕は今、成田国際空港発イタリア行ANA便に搭乗している。飛行機はあまり好きな方ではない。 目的地はイタリア第4の都市トリノ。 確か…初代ローマ皇帝アウグストゥスから、名前の由来があったはずだが、なぜアウグストゥスがトリノになるのか、詳しくは忘れてしまった。 そのトリノにある聖ヨハネ大聖堂には、キリストの聖骸布が保管されている事で有名だ。 近年話題になった映画『ダ・ヴィンチ・コード』を見て知った人も多いだろう。 聖骸布の真贋はともかく、別に僕はクリスチャンだと言う訳ではない。 また、信仰心が強いと言う訳でもない。 あの事件に遭遇するまでは…。 僕の名前は荒木純一郎。元々は神仏に対して否定的で、俗に言う心霊現象に対して懐疑的な人間だった。 それが今では、世界中のUMAを追う専門のフリーライターだ。表向きは…。 UMA=Unidentified Mysterious Animal つまり、未確認生物の事だ。和製英語なので外国人には通じない。 そもそもUMAなんて、実態も確証もない物をまともに取り扱ってくれる新聞社や雑誌社は少ない。だから身入りも少ない。 ましてや仮に何らかのUMAが存在していると、確固たる証拠が見つかればそれはその瞬間からUMAではなくなってしまう。 ゴリラもパンダも19世紀に捕獲されるまでは未確認生物UMAだったのだ。 そう考えると、UMAはUMAのままでいてくれた方が良いのかも知れない。 その方がUMAにとって幸せだ、と言うより人間にとって幸せだからだ。 なぜなら僕が追うUMAとは… ディアブロー 【Diablo】 悪魔の獣だからだ。 ではなぜ、僕がディアブローを追っているのか…?。 そのきっかけとなった、あの事件を今から書こう。 そしてトリノで再会する事になっている神父ラゾーヨと、未だ姿も知らぬ闇の教皇の話を…。
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