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明智 小次郎、彼はこの高校の“揉め事処理部”の部長だ。正式には“明智小次郎探偵事務所”らしい。俺はそこに在席いや、入部させられたのだ。ただ数合わせの為に。
まぁ、表向きというか学校向きには“揉め事処理部”であり、本人いわく“明智小次郎探偵事務所”らしい
そんな不正行為を働いて手に入れた部室と不正に認めさせた不正だらけの部活なのだ。
「で、なんなんですか」
「尾守、任務だ」
「はぁ」
任務=依頼であり揉め事だ。
「とりあえず顔写真だ」
そう言って視聴覚室から掻っ払ってきた長机に一枚の写真が投げられた。
裏返って見えねぇじゃねぇか。
「ん?」
めくり返す。その写真には猫が一匹、黒い毛並みよく赤いリボンを首に付けている。お洒落な猫だなぁ。今の世の中は犬にさえ服を着せる時代なのだから、これはお洒落とは言えないレベルだろうが、俺としたらお洒落な部類に入る。
「え?まさか依頼って」
いくら何でもベター過ぎる。この展開はいくらなんでもベタベタだ。
「その猫、ケットシーという名前らしいんだが、三日前から帰ってないらしいんだ」
「まさか」
カッコつけるようにニヒルに笑いそして指差し明智さんは言った。
「そのまさか、だ」
「んな!?」
「すまんな、俺はテスト勉強があるんだ」
「に、逃げるんですか!?」
「尾守!!俺が次の年、同級生になってもいいのか!?」
明智 小次郎、誰もが知る名前だ。この学校で知らない者はいないだろう有名人だ。“揉め事処理部”なんて奇妙な部活の部長というものもあるが、何より二浪しているからだ。
「……ぐ…」
「じゃ、な」
そう言って部室から出ていった。
二浪している相手にテスト勉強するな、なんて言えるわけがない。もし本当に三浪などしてみろ、俺の春色の三年生は黒色になるだろう。
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