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そんなわけで夕燈を連れて街に繰り出しているわけだ。
秋の夕暮れは早い。
四時半なのにも関わらず東の空は暗く青い、反対に西の空は夕日が最後の光りといわんばかりに輝いている。
「不思議な猫さんですね」
「そうか?」
「そうですよ」
不思議な猫、夕燈の感想自体が不思議だと思うんだが。
「照様、それでどうするのですか?」
「どうするもないだろ、聞き込みあるのみだろ」
探偵はその現場を見ることにより非常識のような発想により事件を解決するが警察は現場とその外側を調べ常識の発想により事件を解決する。
何が言いたいかというと、俺達のような“揉め事処理”をする人間は後者だと言いたいのだ。
「ローラー作戦ですね」
「ん~、まぁやれるとこまでな」
流石に二人でローラー作戦なんて無理だと思うんだが。一つのマンション全員に聞き込むなんてしたら疲れて倒れる間違いなし。
「資料によれば」
明智さんから貰った封筒を開ける。そこには依頼人の名前、住所、猫が消えた時の状況など事細かに手書きで書かれた書類がある。
「依頼人の名前は庭園 册(にわぞの ふみ)2―6特進クラスだな」
俺達の学校は普通科、特進科、情報科、国際科と多彩な科目がある。
当然、俺は普通科だ。
勉強もそこそこな俺に勉学かそれともパソコンか語学か、なんて考えられない。
「隣のクラスですね」
「あ、そうか夕燈は特進クラスだもんな」
「はい」
そう彼女も特進科、いわゆる勉強できます組なわけで。事実夕燈は学校10本の指に入るほどの天才だ。
「取りあえず庭園さんの家周辺から聞き込みだな」
「はい」
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