No.3 第一の願いと妹

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僕はランプをスポーツバッグに仕舞い、そそくさと家路を急いだ。 僕以外誰もいない河原から、不法投棄されたゴミ達から、落ちていたバニラアイスの包み紙から、逃げるようにしてチャリンコに乗り、走り去る。 オレンジの光に包まれながら、汗だくになって、ペダルを漕ぎ続けた。 誰にも会う事なく、自宅に到着する。 息せき切って家の門を抜け、あたふたとチャリンコを片付けた。 スポーツバッグを小脇に抱え、玄関の扉を開く。 カウベルが軽やかに鳴った。 只今も言わずに靴を脱ぎ散らかし、急いで階段を駆け上がる。 そして立つ。 二階の廊下で、立ち尽くす。 「――伊季」 呟いてみた。 そして長い長い溜め息を吐き、自分の部屋へ、とぼとぼ入る。 スポーツバッグをベッドに放り投げた。 思い直して、机の上に置く。 ベッドに仰向けに倒れ込む。 右の二の腕で両目を覆い隠すと、つむった瞼の中で、光が舞い踊った。 足が、ジンジン痺れている。 「伊季」 もう一度呟いた。 じわりと涙が滲んで、鼻の奥がツンとする。 そして、バニラの香りが漂った。 錯覚? 動揺した僕の左手がベッド脇に積み上げられた漫画本を崩す。 思いの外、大袈裟な音を立てて、全巻揃えた漫画本が、ばらばらと崩落。 「あ~あ。何やってんのよ、兄貴ぃ」
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