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「――何、コレ?」
「召し上がれ」
やや手狭なダイニングの大部分を占める木製のテーブル。
その上で湯気を立て、食欲をそそる匂いを漂わせる僕の手作り。
「ほほぉ。あなた様のご家庭では、かっぷらーめんが御馳走なのですな」
「ううん……この場合、泣きながら食べるべきなのかしら? それともツッコミを入れるべきなのかしら?」
「手形家の経済状況次第ですね」
「……あれ? ナイスジョークって称賛されて伊季が僕に抱き着いて、えいこの我が儘ボディっ」
「な何、口走ってんのよコノ『年間セクハラ大賞十年連続受賞により殿堂入り男』がっ!」
よく噛まないね。
「それはそれは。世間の皆様は目が肥えていらっしゃる」
慈しむような温かい笑顔を僕に向ける。
「してませんからね、そんな受賞。分かってるとは思いますけど」
一応、念を押す。
「あたしが作るわよ」
そう言って木の椅子から立ち上がった伊季は、くるりと反転し、ダイニングとキッチンを繋ぐ扉の前まで行ってドアノブを掴む。
「エプロンはシンクの上かな下かな?」
覚えてるのか。
やはり僕の妹。
「上だよ」
「ラジャー」
片手をひらひらさせて、扉の向こうに消えた。
狭苦しいダイニングに取り残される、老人と美少年。
正方形のテーブルを挟んで椅子に腰掛ける。
「誰が美ですか誰が」
「地の文にツッコミ入れないで下さいよ」
「じゃろに訴えられますからな」
そこまでっ。
僕の犯した罪はそれほどまでに、それほどまでに深いのでしょうかぁ!
偽りあり、なのですかぁぁぁ――
「何を悶えているのですか。筋金入りの変態ですか、あなた」
だからツッコミがきついからぁ!
「もっと僕に優しくしてよ! もっと僕を誉めて」
「何のパクリですかな? 私、じゃぱにぃずあにめにも造詣が深くて、ですな」
皆まで言わないでぇ!
「おや? 良い匂いが漂って来ましたな」
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