No.4 妹とタイカレー

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「――何、コレ?」 「召し上がれ」 やや手狭なダイニングの大部分を占める木製のテーブル。 その上で湯気を立て、食欲をそそる匂いを漂わせる僕の手作り。 「ほほぉ。あなた様のご家庭では、かっぷらーめんが御馳走なのですな」 「ううん……この場合、泣きながら食べるべきなのかしら? それともツッコミを入れるべきなのかしら?」 「手形家の経済状況次第ですね」 「……あれ? ナイスジョークって称賛されて伊季が僕に抱き着いて、えいこの我が儘ボディっ」 「な何、口走ってんのよコノ『年間セクハラ大賞十年連続受賞により殿堂入り男』がっ!」 よく噛まないね。 「それはそれは。世間の皆様は目が肥えていらっしゃる」 慈しむような温かい笑顔を僕に向ける。 「してませんからね、そんな受賞。分かってるとは思いますけど」 一応、念を押す。 「あたしが作るわよ」 そう言って木の椅子から立ち上がった伊季は、くるりと反転し、ダイニングとキッチンを繋ぐ扉の前まで行ってドアノブを掴む。 「エプロンはシンクの上かな下かな?」 覚えてるのか。 やはり僕の妹。 「上だよ」 「ラジャー」 片手をひらひらさせて、扉の向こうに消えた。 狭苦しいダイニングに取り残される、老人と美少年。 正方形のテーブルを挟んで椅子に腰掛ける。 「誰が美ですか誰が」 「地の文にツッコミ入れないで下さいよ」 「じゃろに訴えられますからな」 そこまでっ。 僕の犯した罪はそれほどまでに、それほどまでに深いのでしょうかぁ! 偽りあり、なのですかぁぁぁ―― 「何を悶えているのですか。筋金入りの変態ですか、あなた」 だからツッコミがきついからぁ! 「もっと僕に優しくしてよ! もっと僕を誉めて」 「何のパクリですかな? 私、じゃぱにぃずあにめにも造詣が深くて、ですな」 皆まで言わないでぇ! 「おや? 良い匂いが漂って来ましたな」
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