No.4 妹とタイカレー

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「この独特の匂い。タイカレーでしょうか。実に楽しみではありませんか後ろ手に手錠が回っています様」 逮捕ですか確保ですか、捕縛ですか? 前科一犯なのですかぁ! 無実ぅ! それでも僕はやってにゃ 「地の文で噛むのはお止め下さい。読者が混乱しますから」 「混乱を広げてるのは、アナタではないですか」 「やれやれ」 深い溜め息。 「他人のせいにしなくては自らの精神を保てないのですか。薄弱な、余りに脆い自我。己の内面を深く見詰める事をしなくては、自身の成長は望めないと知りなさい」 「いい匂いですねぇ。僕もタイカレー大好きでして」 「現実逃避ですか。そうやって逃げていれば誰かが救ってくれると思っているのですか」 「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメ――って、今の流れで『逃げちゃダメだ』は変かな」 「最初から貴方の言動は常軌を逸して――」 「何だとぉ?」 僕はジャッキーに詰め寄る。 「常識外れなのはどっちですか? 何なんですか、ランプの魔神だの願いを叶えるだの――」 叶った、のか。 常軌を逸しているのは、死んだ筈の妹が生き返るこの状況。 「出来たよー」 タイカレーの食欲をそそる匂いが、僕達の争いに待ったを掛ける。 椅子に腰掛け、手を合わせた。 「いっただきまーす」 早速頂く。 スプーンでカレーを掬い口許に運ぶ。 「どう? 美味しい?」 エプロンをぎゅっと握り締め、心配そうにこちらを見遣る我が愛しき妹。 「美味しいよっ、美味しいに決まってるじゃないかっ」 「もう少しスパイスを効かせて貰えれば私には、ちょうど良いのですけどねぇ」
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