No.4 妹とタイカレー

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「あなたは世界を否定して」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「あなたは自らを拒絶して」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「現実には存在しない世界の中でまどろんでいるだけなのですよ!」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「思い出しなさい!」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「全てはそこから始まるのです」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「歩き出しなさい」 あぁあぁあぁあぁあぁあ 「さあ」 あぁあ、あぁ、あ。 ――て。 て? 手? 誰の―― ジャッキー? ジャッキーさんの手。 差し延べられているのはジャッキーの手。 笑顔。 力強い、笑顔。 「気付きましたか」 手を握る。 厳つい、皺だらけの大きな、手。 温かい。 そして硬い。 「そして」 僕の目を、じっと覗き込む。 「思い出しましたか?」 僕は「あ」唾を飲み込んだ。 「あの」唇を舐める。 「僕は」わなわなと震え「僕は、あの」 きっ、と表情を引き締める。 弱々しく深呼吸した。 そして言う。 「思い出しました」 「あなたの名前を教えて下さい」 「手形一息です」 「あなたの妹の名前は何と言いますか?」 「手形伊季です」 「あなたが犯した罪は何ですか?」 「嫉妬です。そして」 「そして?」
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