No.1 河原での出会いと注意事項

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大柄な白人男性は仕立ての良さそうな黒のタキシードを身に纏(まと)っていた。 頭には白いターバンを巻き付けている。 対して僕は、有りがちな紺のブレザーにグレーのスラックス、足元は、ローカットで白一色のカラーリングをしたキャンパススニーカーだった。 髪はベリーショートの黒で、顔は、まあ、その、普通。 「これはこれは。失礼致しました。そう言えばまだ名乗りをあげていませんでした。私は、何だったっけ……ああ、ジンと言います。あなたは?」 自分の名前を忘れる……健忘症とかいう奴だな。 触れまい。 敢えて触れまい。 「手形一息(てなり・かずき)って言います。てがた、って書いて、てなり。ひといき、って書いて、かずき、です」 しかしジン、か。 やはりランプの魔神を気取った可哀相な人なのだな。 責めない。 否定しない。 その二つを心掛けるとしよう。 ん? ジンさんの左頬が微妙に引き攣(つ)っているような? 「手癖が悪いわね、の手に。形が悪いわね、の形に。今まで見た中で一番駄目ね、の一に。息が臭いわ、の息。素敵な名前をお持ちですな」 「帰れ! ランプの中に帰れ! どんなシチュエーションだ、それは!」
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