No.1 河原での出会いと注意事項

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「じゃ、じゃあ、勢いで言ったり、ふざけ半分で言ったり、ポロッて思わず零したり、ツッコミであって本心でなく言ったりしたのもカウントされちゃって、今言いましたよ、確かに言いました、私この耳でしっかりと拝聴致しましたから、駄目です、いけません、およしになってお客様」 「妄想プレイでございますか? 手癖様のご趣味に口出しする積もりは毛頭ないのですがしかし、そのようなお戯れには出来ましたら、お一人の時間を使われる事をお勧め致します。私も変態の戯言に付き合う程には暇を持て余してる訳ではないので」 慇懃無礼な物腰を崩そうとしない、ジンさんの笑顔が眩しい。 僕は少なからず動揺し、上手く言葉を紡ぐ事が出来ない。 「いえ、あの、その、ですね」 「ご心配には及びませんよ。お願いを言われた際には私が、必ず確認を致します。『今言ったお願いで宜しいでしょうか?』そう伺った後に『間違いありませんか?』と問い掛け致します。もし相違ないならば『間違いありません』とお答え頂き、考え直したいのであれば『訂正します』とお答え頂きたい。さらに『間違いありません』とお答え頂いたその後、念には念を入れて最終確認を行います。即ち、『ふぁいなる・あんさぁ?』」 「何のリスペクト? 世俗に塗(まみ)れるにも程があるんじゃないですかね? 伝統あるアラビアンナイトに誉(ほま)れ高き、ランプの魔神なのでしょう? 古式床しき」 「形にこだわっていては古びたモノしか見る事が叶いません。非難や中傷に対しては『世間のはみ出し者ですから』と背中を緩めさせるのが、べたぁかと存じ上げます。むやみやたらと計算高くなるのは棺桶に程近くなってからでも。十分出来るぜ、らぁいふ・おんっ・まいっ・びぃぃと!」 上品な物腰で、オペラ風にシャウトする。 「ロックですか? バンド好きですか? BOФWY世代なんですか?」 ジンさんは茶目っ気混じりに、目を剥き口を結んだまま口角を上げ、肩を竦める。
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