光の射す方へ

12/14
前へ
/332ページ
次へ
まひるの視線は玲奈で固定されたまま、教壇に向けられる事はなかった。 まだ昨日の事のように、あの日、拓海の胸に抱かれていた事が思い出せるのに。 声を聞いただけで、こんなに胸が高鳴るのに。 今、拓海の姿を見てしまったら…… 整理を付けた筈の心が、また揺らいでしまいそうだったから。 まひるは教室に背を向け、廊下の窓辺に寄り掛かって耳をすます。 意識を集中させ、拓海の声だけを拾っていた。 「ママ、こんだん会に出なくてもいいの?」 玲奈がまひるの手を握りながら顔を覗き込む。 「いいの。前の時に出たから。さ、買い物して帰ろ」 首を傾げながら微笑むと、玲奈は大きな声で、うん!と返事をした。
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2960人が本棚に入れています
本棚に追加