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そんな君に恋に落ちたのは俺の中でそれは必然だった。
死の宣告を受けてから人に自分の気持ちを伝えるのは初めてだったし、なにより俺は誰かの優しさを求めていた。
気付いた時には真上にあったはずの太陽が西の空に沈みかけていて、空は夕焼けに染まっていた。
その辺りから話の話題が、世間話に変わったいった。今日学校でなにがあったとか、友達がおかしかったとか、そんなありふれた会話だ。だけど俺はそれが嬉しかった。久しぶりに日常を感じられた。
上辺だけの同情ならみんなしてくれた。だけど誰一人としてたわいもない会話をしてくるやつはいなかった。
死ねやつにこんな話をしてもなぁ、って誰もが思っているような気がしてならなかった。だから、すごく楽しかった。久しぶりに生きてる実感がした。
楽しかった時間はあっというまに過ぎ、別れの時がくる。
連絡先を交換して、また会う約束をし家路に着いた。
家に帰って一人でいるのに自分が死ねってことを忘れられた。
その日俺に生きる理由ができた。
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