*鳴かない猫*

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一、紅葉とレイがMoon Childに着く頃には、夜の9時を回っていた。 「結局、雅奈恵さんは何処に行ってしまったのでしょうか…」 人間の姿になったレイは、白いカッターシャツのボタンを止めながらふと呟いた。 「レイはどう思う?」 テーブルに色鮮やかな駄菓子を広げながら、紅葉が楽しそうに問う。 レイは少し考える風に顎に手を添えると、静かに口を開いた。 「桧山さんの言葉から捉えると、悪魔と関わった可能性しか考えられないですね。雅奈恵さんが普通に魂をとられただけなら、クラスメイトまで記憶がない事は考えられません」 「そうだね。ジャッジソウルに情報が行ってない事から、管理から外れたと考えて良い筈だし」 紅葉が両の手で頬杖をつきながら、レイの言葉に同意を示す。 そして、それに…と付け加えると、紅葉は、いつの間に持っていたのか、白い大学ノートサイズの紙をレイの前に出した。 「見ちゃった」 「…それは…?」 レイがそれを受け取り、聞き返した。 「悪魔の契約書。の、控えみたいなもんかな」 「控え?」 「うん。本来悪魔と契約を交わせば、身体の一部に刻印がつくんだ。他の悪魔と契約が被らないように」
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