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レイは紅葉に優しく頷き、各々の寝室へと足を運んだ。
「雅奈恵さんが、無事だと良いのですが…」
レイはそう呟くと、1日の疲れを癒すべく、ゆっくりと瞼を閉じ、ベッドに身を委ねた。
***
真夜中に目が覚めたのは、きっと小さく聞こえる音のせいだろう。
耳を傾けなければ何処から聞こえているかまでは計り知れないが、意識しなくとも耳に響くその小さな音は、どうやら一階の玄関から聞こえているらしい。
その音は、何か固く先の鋭い物で引っ掻いているような、カリカリと言う音だった。
その音が何なのかはあまり気にはならないが、ずっと続く音に眠気を飛ばされ、音の元を消さなければ寝れそうにもない。
身体の疲れが取りきれていないため、一階まで降りるのは気が引けたが、レイは渋々重い足を動かす。
「こんな時間に、一体何なんでしょうか…」
ゆっくりと階段を降りている間も、カリカリという音は止まない。
ようやく玄関まで達した所で、レイは硝子の窓から外を伺った。
扉の下の方に何か黒い物体が見える。
レイは扉を引き、その物体を確かめようとした。
すると、扉が開いた瞬間店の中にその黒い物体が勢いよく飛び込んできた。
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