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「そうじゃないよ、遥。昔はね、ダムじゃなくて小さな村だったんだ。色々あって、今はダムになっちゃったんだ」 「ふぅーん…」と遥はまばたきをしている。 まだ五歳の遥には少し難しかったらしい。 夏の日差しをしばらく浴びていると、突然俺の隣にいる女性がダムの方を向いて喋りだした。 「はる…………私達幸せだよ…。遥もこんなに大きくなった。聞いてよ、はる。この前ね、相馬(ソウマ)ったら遥を………」 一通り彼女は話すと、俺と遥の方を向く。その瞳はかすかに潤んでいる。 「おかぁさん?誰にお話ししてたの??」 遥が尋ねる。勿論可愛い。 彼女は口を開こうとしない。そんな彼女の代わりに俺は口を開く。 「お母さんはね、大切な大切な友達に話してたんだよ?遥もご挨拶しよう」 純粋な遥は、ダムに向かってペコリとお辞儀する。 「これからもおとぉさんとおかぁさんをよろしくね……?」 「いい子だ」とまた俺は遥の頭を撫でる。 はる…………聞いてるか? 俺達は元気で暮らしてる。
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